”試用期間”を過信しない

中途採用では通常、試用期間が設けられています。

多くの経営者の意図としては、「会社に合わない人材・期待した能力がない人材は、試用期間終了後に辞めてもらいたい」という意図で、設定しているものだろうと思います。

しかし、過去の裁判例などによると、多くの経営者の意図の通りに本採用拒否をしてしまうと、不当解雇と評価されてしまう場合が大半かもしれません。

なぜ不当解雇となるのか

試用期間の場合、本採用拒否については普通、「通常の解雇より幅広い裁量権」が認められているとされています。

ただし、どんな場合でも本採用拒否できるとはされていません。裁判例によれば、以下の制約があります。

前記留保解約権の行使は、上述した解約権留保の趣旨、目的に照らして、客観的に合理的な理由が存し社会通念上相当として是認されうる場合にのみ許されるものと解するのが相当である。(三菱樹脂事件)

つまり、本採用拒否については、以下の要素が必要です。

・客観的に合理的な理由がある
・社会通念上相当として是認されうる

これを読んだら、普通は「客観的に合理的な理由?」「社会通念上相当?」と疑問に思うでしょう。これは、実際に「事例から考えてみましょう」という言い方です。

そして、同じ判決では、次のように述べています。

企業者が、採用決定後における調査の結果により、または試用中の勤務状態等により、当初知ることができず、また知ることが期待できないような事実を知るに至つた場合において、そのような事実に照らしその者を引き続き当該企業に雇傭しておくのが適当でないと判断することが、上記解約権留保の趣旨、目的に徴して、客観的に相当であると認められる場合には、さきに留保した解約権を行使することができるが、その程度に至らない場合には、これを行使することはできないと解すべきである。(三菱樹脂事件)

ここで述べられている条件は以下の通りです。

「当初知ることができず、また知ることが期待できないような事実を知るに至った」「その者を引き続き当該企業に雇用しておくのが適当でないと判断することが客観的に相当である」

「客観的に相当」という、またよく分からない表現が出てきました。なお、実務上、これが認められる場合は、解雇が認められる時と、大して変わらない印象です。

ですから、仮に試用期間が終わって能力が見合わなかったから本採用拒否したとして、「不当解雇だ」と言われてしまったら、それが認められる可能性は高いです。つまり、労働審判に持ち込まれてしまったら、高い和解金を払わなければならないことになる可能性が、非常に高いのです。

本採用拒否する方法

では、どうすれば、能力不足の方に、辞めてもらうことが出来るのでしょうか。そのための方針は、大きく3つあります。

・能力不足に基づく本採用拒否
・雇用期間を短く設定しておく
・合意の上退職してもらう

能力不足に基づく本採用拒否は、かなり客観的に基準を設定しておかねば、裁判・労働審判で勝てません。丁寧に設定し、本人に明示しておかなければなりません。

雇用期間を短く設定すれば、雇止めは簡単です。ただし、契約更新を繰り返すと、やめてもらうことができなくなる『無期転換ルール』がありますので、気を付けなければなりません。

合意の上退職してもらうのが理想です。ただ、その合意がなかなかできないから問題なので、「雇用は慎重に」、しっかり面接して、能力を見極めて雇用するに越したことはありません。


執筆者紹介

私立開成中学・高校卒
私立上智大学法学部・法学研究科卒

広告代理店・経営コンサルティング会社を経て独立。法律系・広告系・教育系など、幅広い分野で大手企業の事業を指導。

主な実績として、官公庁の広告類や就業ルール改定、大手製造業の見える化など。大手学習塾や社会保険労務士法人における役員・業務改善責任者・現場責任者などの経験もある。

プライベートでは、ポーカーにおいて、国内の大きい大会で準優勝、国際大会にも複数出場、オンラインで65段階中最高のレイティングを獲得などの実績がある。

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